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[144] - 2012/06/08 (20:53)

東宝木町の住宅

設計/押尾章治/UA
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水田を眺める空洞

水田を眺める住宅の計画である。敷地は宇都宮市郊外。東側に少しまとまった水田が残り、住宅街区の中にあっても一服の清爽感がもたらされる場所である。勿論、将来的には環境の変化も起こり得ないとは限らず、施主との打合せでは、環境の変化に翻弄されない住環境の在り方が模索された。

様々な案の検証の後に、住宅の水田側部分に大きな空洞のような場所を設けるにいたる。ここでは、なぜ大きいのか分からないぐらい大きな「空洞」が作り出せれば、外部環境の変化に抗い得るのではないかと考えたからだ。

外部環境は自然/人工物にかかわらず常に移り変わり捉えどころがない。「変化」とはその変わり続ける流れの中の、ある切断面の時間的な推移である。ある任意の時間で区切り環境を推し量って比較するということだ。当然のことながら、この場合の任意の時間的な区切りとは敷地の内部側での都合によるのだ。しかもそれは敷地内部において、周辺環境の変化に対応させる計画をおこしたときに初めて顕在化する。その対応関係が「変化」を生む。つまり「変化」とは敷地の内部側から生じているのだ。そうであれば、周辺環境との対応関係を内部に作らなければ、環境を変化と捉えなくともよい。変化に翻弄されることもなくなると考えた。

こうして、外部の変化に対応しない「大きな空洞」を作るに至った。具体的には、直接的な機能を持たない外部のテラス状の空間や階段上部の吹抜けを、高さ7m程度にまで肥大させ「大きな空洞」とした。住宅の実質的な機能を果たす個室や居間の部分などは、その「空洞」に付属するように、建物下部の基壇部分やピロティで地盤面から空中に持上げられたヴォリュームとして添わせた。環境の変化に対しては「大きな空洞」として向き合える。この「空洞」はただ大きく、日常的な生活の目的がない。生活空間は、その「空洞」を媒介にすることで、外部の変化に囚われることもない。外部の変化とは異なる時間軸をもつことになるのだ。つまり、「大きな空洞」越しに映るのは、唯々、止むことなく移ろい続けるひとつの流れになるということだ。

こうして環境から自立することで、「変化」に対応を迫られる側から「変化」を俯瞰する側へと立ち位置が変わる。変化に翻弄されるのではなく、環境に対する「語り部」としての生活が始まるのだ。(押尾章治)



用  途 :専用住宅(夫婦+子供2人) 
敷 地 :172.61㎡(宇都宮市宝木町)
建築面積 :103.14㎡ 延床面積 :159.29㎡
規 模 :地上2階  主要構造 :RC造+木造+鉄骨造

建築設計 : UA/押尾章治、伊東克明
構造設計 : オーク構造設計/新谷眞人、川田 知典
設備設計 : アイシステム設計/沢田守
家具デザイン:押尾章治 + hhstyle/渡邊淳
施  工 : 成常建設/松島清



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外壁の「4つの丸窓」は新鮮空気の取入れ口。稲穂の高さに取られている。水田の気化熱により温度の下がった空気が取入れられ、地下ピットに送り込まれ熱交換を行う。
地下ピットへは、室内の空調された後の排気空気を導き、安定した地下ピット環境をつくった上で、外部から取入れた新鮮空気のダクト経路と合わせ、熱交換させる仕組みをとっている。

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大きな気積と7mの高さを持つ吹抜けは、それ自体が重力換気の井戸になっており、排煙ハッチにより上部にたまった熱い空気を一気に排出し負圧をつくることで、機械換気に頼らなくとも床下のピットを経由した稲穂の新鮮空気が採り入れられる。吹抜けの下には洗面や浴室がオープンに設えられる。

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置き家具、造付家具共、全てオリジナルデザイン。製作は hh.style。

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外部仕上げ
屋根  :露出シート防水
外壁  :ガルバリウム鋼板t0.4平葺き
開口部 :アルミ/ステンレス/スチールサッシ

内部仕上げ
天井 :PBt9.5+ビニールクロス/CO打放し
壁  :PBt12.5+ビニールクロス、ケイカル板t12+アクリル弾性塗材、CO打放し   
床  :磁器タイルt12  
建具 :栓 OS+CL
製作家具:白河石+St.溶融亜鉛メッキフレーム/白井石材
設備
空調 :冷暖房方式/空冷ヒートポンプ、マルチエアコン
   :換気方式/機械換気
給湯 :エコキュート
給排水:給水方式/上水道直結
   :排水方式/下水道直結






■工事期間途中から竣工後しばらくの間まで、水田は駐車場と化していた。近隣のタワーパーキング建替えのためで、仮設の鋼板が敷かれ200台の車が停まっていた。
現在は、また元の水田に戻っている。

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